本作品は、上村朔之介が2007年から2026年までの19年間に書き残した64,138のツイートを素材とする。それは人間がひとり生まれ、成人に至るのと同じ歳月である。
文は文節へと切断され、偶然のみに従って再び縫合される。ここに現れる一文は、そのすべてが実在の言葉でありながら、誰にも書かれたことがない。
映画『揺れる楽園』の企みのひとつは、AIか、実写か——AIだとすれば、そこで生まれる感情はフェイクなのか、という問いにある。『CUT UP TWEET』で接続される言葉もまた、徹底して無作為である。それでも、そこに何らかの意味を見出してしまうとき、新たな物語が生まれるのかもしれない。
系譜
- 1917
- マルセル・デュシャン《泉》。男性用便器に「R. Mutt 1917」と署名し、展覧会に出品した。出品は拒否された。既製品を選び、別の文脈に置くことで、それを作品として提示した——「選択すること」の思想は、本室の額縁へとつながっている。
- 1920
- トリスタン・ツァラ「ダダの詩の作り方」。新聞記事を切り刻み、袋に入れ、引いた順に並べよ。ダダイズムは、偶然に詩を委ねる方法を「レシピ」として提示した。
- 1959
- パリのビート・ホテルで、画家ブライオン・ガイシンが新聞紙をカミソリで切った。ずれて重なった紙片の偶然から、ウィリアム・バロウズとともにカットアップ技法を発展させ、『ソフト・マシーン』『ノヴァ急報』などの作品へと展開した。現在を切れば、未来が漏れ出す——
- 1970s–
- デヴィッド・ボウイは1970年代から歌詞制作にカットアップを用いた。1990年代には、テキストを分割し再結合する専用ソフトウェア「Verbasizer」も開発した。カットアップは、紙からコンピューターへ移った。
- 2000
- レディオヘッドのトム・ヨークは、書きかけの詞を切り刻み、帽子から引いて並べる方法を『Kid A』の歌詞制作に用いた。帽子から引かれた紙片が、歌詞になった。
- 2026
- 本作。19年間・64,138ツイートの自己記録の切断。
注記
- 断片への追記・改変は一切行っていない。切断と、結合のみである。
- 生成された文は、上村朔之介の発言ではない。
- 各作品には出典としてX(Twitter)へのリンクが付されている。すでに削除されたツイートもある。それもまた時間の作用である。
- 言葉を完成させるのは、装置ではなく、あなたの読解であり、想像力である。
2026年8月8日
Taipan Idols
上村朔之介